――愛用している釣り糸の工場を見学していかがでしたか。

　齊藤　当社の主力商品であるポリエチレン製の釣り糸（PEライン）は細くて強度があり、低伸度という特長があります。時計回りと反時計回りの回るボビンに巻かれた原糸を少しずつ引き出し、交差させながら編んでいくことで、よれのない、まっすぐな釣り糸に仕上げます。特殊な編み方なので、製紐（せいちゅう）機から自社開発しています。

　――PEラインは釣り業界に革命を起こしました。それまで主流だったナイロンやフロロカーボン製の釣り糸よりも細くて強度がある釣り糸が登場したことにより、釣り竿やリールも進化しました。

　齊藤　伸びにくいので、水深50メートルでも、魚が餌を突いたり飲み込んだりする時のアタリを感じることができます。それまではできなかった釣りが可能になり、PEラインが普及した1990年代以降は釣りの種類が全く変わりました。

　――芝田社長は海外出張の折、現地で釣りを楽しむこともあるとか。世界中の釣りを見てきた経験から、日本の釣り具をどう思いますか。

　齊藤　家電などメード・イン・ジャパンの競争力が弱くなっていると言われますが、釣り具に関してはメード・イン・ジャパンへの信頼は絶大です。世界中の釣り愛好家は釣り竿もリールも、ルアーも糸も、日本製がナンバーワンだと認識しています。海外旅行の際、スーツケースにＹＧＫのステッカーを貼っていると釣り好きの外国人によく話しかけられます。そのくらい知られている。釣りをしない人にも、日本の釣りは世界に誇れる文化だと知ってほしいと思います。

　――釣りは飛行機を使った旅とも親和性がありますね。

　齊藤　日本の海は太平洋側と日本海側とで釣れる魚が違い、四季の変化もあるので、各地を移動して多種多様な釣りを楽しめます。海外の空港では釣り竿を持った旅行者を多く見ますが、日本ではあまり見かけない。これだけ恵まれた漁場があるのだから、日本人はもっと移動して釣りをすべきです。徳島へもぜひ、お越しください。鳴門海峡のタイ釣りは日本一面白いですよ。

　――仕事にも役立つそうですね。

　齊藤　一般的に仕事の接待といえばゴルフですが、釣りの方が向いているのでは。ゴルフ後の会話はスコアの話くらいですが、釣りは行く場所や季節によって釣れる魚が変わるので話題が豊富ですし、釣った魚を食べることもできます。

　齊藤　こういう楽しみ方も釣りならではの魅力ですね。